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スティグリッツ教授が語ったこと

3月16日、第1回「国際金融経済分析会合」が官邸で開かれ、ジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授との意見交換というかたちで会合が行なわれた。

この和訳には、昨日も書いたように2日も要した。

理由は、その内容が「アベノミクス全否定」であり、かつ、黒田氏らが進める金融緩和についてもケチョンケチョンに批判していることにある。

その内容をいくつか摘示しておきたい。


大不況(the Great Recession)に関する誤った診断
・ 需要が足りないことが問題なのだ。

非対称な調整
・ 所得の低下に直面する国家(企業、家計)は消費を減少させざるを得ない。
・ 所得が増加した国家(企業、家計)はその分の支出を増加させていない。

当然の手段に関する対立する見解:金融政策
・ 金融政策は、概ねその役割を全うした。
・ 深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれまでにない。唯一の効果的な手段は財政政策。
・ 本当の問題は、ゼロ金利制約ではない。金利を少し下げること(例えマイナスの領域に入ったとしても)は機能しない。
・ マイナス金利の試みは、景気を大きくは刺激せず、悪い副作用をもたらす可能性も。
・ 量的緩和政策は不平等を拡大した。しかし、(もしあったとしても)投資の大幅な増加にはつながらず、金融市場の不完全性あるいは不合理性により、リスクのミスプライシングやその他の金融市場の歪みをもたらした可能性。
・ 主な便益の一つは、競争的な通貨の切り下げである。しかし、それは、ゼロ・サム・ゲーム。
・ 適切な財政政策なしでは、「唯一の選択肢」問題は更に悪化する一途。

効果的な施策
平等性を高めるその他の施策は世界の総需要を増加させる。
・ 経済ルールの大転換:市場で得る所得をもっと平等に。
・ 所得移転と税制の改善。
・ 賃金上昇と労働者保護を高める施策。
・ いくつかの国では、組合や交渉を取り巻く法的枠組みを改善。

構造改革(Structural Reforms)
基本的な原則
・ 適切な需要なしには、サプライサイドの改革は、失業を増加させるだけで、経済成長には寄与しない。

機能するサプライサイドの施策
・ 人間への投資の拡大-より健康でより生産性の高い労働力を創出する。
・ 経済を再構築し、古い産業から新しい産業への移行に役立つ産業政策
・ 市場だけでは、これらの変革は作り出せない。
・ 競争政策-経済的な権力が合従することを防ぐ
・ 独占は産出を阻害する。
効果的でない(または逆効果な)サプライサイドの施策が多く存在する。
・ 法人所得税率の引下げ。
・ 金融市場の規制緩和。
・ 投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
・ 貿易政策においてサプライサイドの効果は期待されてこなかった。
・ 米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される。
・ TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう。

金融セクターからの害を防ぎ、以下も阻止する。
・ 過度なリスクテイク
・ 市場操作、略奪的貸付など
・ 市場における支配的地位の乱用

この道しかない
・ 政府と市場のバランスを取り戻す。
・ 政府・民間とは異なる「第三のセクター」や、新たな制度枠組みの重要性を認識する。

・ 緊縮財政をやめる。

スティグリッツ教授の資料は、とりわけ新しく発足した「民進党」にも採用されるべき多くの視点を提供している。
なぜなら彼が示す提言は、経団連を支持団体とする自民党には容易に受け入れ難い内容が含まれる一方で、提言は正鵠を射たものとの評価をしているからだ。

彼は「規制緩和」ではなく、「適切な規制」こそが経済成長の「需要」を刺激すると述べている。
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また「格差拡大を助長」する政策は、「需要」を減らすだけだとも述べ、例えば「資本の独占性の弊害」や「サプライサイドの改革(例えば労働改悪)」も需要を減らすと指摘している。

実は、2月15日に投稿され大きな反響となった「保育園落ちた日本死ね!」はこの指摘を見事に反映した(事実)ものとなっている。
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整理すれば安倍官邸が進める、経団連中心の「アベノミクス」は完璧に否定されており、黒田総裁の量的緩和政策も効果はなく需要の不均衡を助長するだけと手厳しい。
率直に云って彼の資料から緊縮財政批判だけを抜き出し「消費増税10%先送り」と報じたマスコミは「失当」だとの反省を要す。

彼の資料から、仮に今後「消費増税先送り」を決断したとして衆参同日選挙をするなら、それは「安倍政権の落第(経済的失政)」を審判するものとなる。

野党は、本資料(官邸HPにアップされている)を噛み砕いて国民に示し、虚構の争点(腹は「改憲」+アベノミクス失敗隠し)をキョウレツに批判し、「改憲裏口入学」とダブルで総選挙の争点とすべきである。






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